2020S 司法1
2020-05-27
末尾に、Q&Aを載せています。
前回以後に作った資料
予習資料 以下の①②③の3点。今回は3点ともITC-LMS・Slackで配布。
この回の前半:おから
① 必須.icon興津征雄「法学の出発点としての条文」法学教室451号(2018年)
全体を読んで理解する。条文の解釈について、慣れてしまえば一瞬でやってしまうことを一つ一つ言語化し順を追って示した解説です。
余力があれば最判平成11年3月10日(自分で探してみる)で答え合わせをしてみる。
この回の後半:「忘れられる権利」に関連する日本の最高裁決定
② 必須.icon最決平成29年1月31日の説明(白石忠志)
これを読んでから③に進んでください。
③ 必須.icon最決平成29年1月31日(民集)
興津解説も説明している「法的三段論法」(前回この授業でも説明)がこの最高裁決定ではどのようになっているかを確認するつもりで読んでください。細かいところは取り敢えずいいです。
いずれについても、よくわからない箇所等について、できれば5月26日(火)12:30までに知らせてください。授業準備に活かします。成績には関係ありません。
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筋書き
興津解説(おから)
興津解説
慣れてしまえば一瞬でやってしまうことを一つ一つ言語化し順を追って示した解説
非常に親切
ほとんどの研究者・実務家の書いたものは、これほど親切ではない。
順を追って読んでいく
設例
条文を探す
e-Gov法令検索
Googleから行かないほうが安全
定義規定
下位法令
解釈する
国語的定義
制度の趣旨
事案の特性
法的三段論法
https://gyazo.com/c8b7b77294baf252121406a9c586b7f6
答え合わせ
法解釈と条文
判決の読み解き
https://gyazo.com/e60a27fbd6474987b1ef20094515fcda
質問・補足
Q 最高裁決定で法解釈がされたということは、本件の行為の時点ではまだその解釈は示されていなかったということになりますが、解釈が示されていない法律によって罰するのは適切でしょうか。
Q 廃棄物処理法の「廃棄物」の定義が放射性物質などを除いているのはなぜでしょうか。放射性物質の廃棄こそ、厳しく規制しなければならないのではないでしょうか。(白石が作った質問)
Q 興津解説が、法2条1項と施行令を両方チェックしているのはなぜでしょうか。法律を受けて制定された施行令なので、施行令だけ見ればよいのではないでしょうか。
判決と決定
総称して「裁判」
民事と刑事で違う
民事は後述
刑事は、刑事訴訟法43条
言葉
「特別刑法」
広い意味での刑法は次の2つに分かれる
刑法という題名の法律
「形式的意味での刑法」「刑法典」
それ以外の罰則
「特別刑法」
「構成要件」
「その他の」と「その他」
「例示列挙」と「限定列挙」
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9:39
忘れられる権利
前提(白石による「説明」)
民事での判決と決定
民事訴訟法と民事保全法
判決と決定
証明と疎明
裁判の公開の程度が異なる
Xさんは(たぶん)氏名を広く知られずにすむ
詳しくは下記Q&A
「債権者」と「債務者」
最高裁決定
前提
「最決平成29年1月31日民集71巻1号63頁」
年月日「最判令和2年xx月xx日」
民集・刑集
事件番号
「平成28年(許)第45号」
年・符号・番号
裁判所ごとに付けられる
実務では重要
データベースで調べるとき有用
https://gyazo.com/ead3c5ee9c4d286c4eb6b2977e13f702
判示事項・決定要旨
裁判所ウェブサイトでも
参照条文
本件の参照条文については後述
順を追って読んでいく
段落には意味がある。
定義語に注意する。
法的三段論法の要素を見つける。
3つともあるが、織り交ぜられている。
https://gyazo.com/49e4c2f966890e1f1acc6fbaaff0b77f
https://gyazo.com/76562aaaaa584c57d97657af0e479d0e
本件の法律構成
「違法」
民集の参照条文
調査官解説
言葉
「ないし」
「人格権ないし人格的利益」
「乃至」
法令では現在では「xxからooまで」と書く
「xx条乃至oo条」は
「xx条からoo条まで」と書く
「並びに」と「及び」
https://gyazo.com/c0450d12767d934f37b0a59a55f15e5a
「違法」
検索事業者では、実際にはどのように対応しているか。
最高裁まで行くのは、特殊、または、氷山の一角、であることが多い。
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課題(試行)
試行なので成績評価には関係ありません。
しかし、次回以降に備え、一度やってみてください。
「東京大学ECCSクラウドメール」でGoogleにログインしていることが必要になると思われます。
今回の締切は5月27日(水)24:00とします。今後は未定。
曜日を間違えていました。本日(授業当日)水曜日の24時が締切です。
今回は、試行でもあり、それより後でも受け付けます。
説明等
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次回の予習資料
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Q&Aなど
shiraishi.icone-Govの条文をGoogle等で検索すると、古い条文に到達してしまうことがあるのですね。e-Govのトップページで検索語を入力したほうが確実のようです。
興津征雄「法学の出発点としての条文 イントロダクション」法学教室451号(2018年)10頁では、Google等で法令名を検索するのが便利と書いていたのですが、修正の必要がありますね。
興津11頁「そうするとXの行為は少なくとも構成要件には該当するといえそうである。」としつつ、そのあとで「不要物」に当たるかどうかを論じているのはどういうことでしょうか。「構成要件」と「要件」の違いは何でしょうか。
shiraishi.icon
ここは少し著者の言葉が足りないと思います。罰則の要件のうち、収集・運搬・処分は満たす、ということを言おうとして、少し端折って書いたのだと思います。
「構成要件」と「要件」の違いは、深く考えている人もいるかもしれませんが、定説はないと思いますので、基本的には同じだと思って取り敢えず先に進んでよいと思います。
いろいろなことを言う人がおり、あまり深入りすると刑法学の沼に入ります。沼にも意味のある沼と意味のない沼があり、私個人の意見としては、「構成要件」と「要件」の違いという沼は、最後は諸家の言葉の好みに帰着するだけですので、入ってもあまり意味がないのではないか(刑法学者の数だけ言葉の好みを覚えることになるだけではないか)と思います。
定義規定の有無が法律によって違うのはなぜでしょうか?また定義規定を設けないことにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
shiraishi.icon
基本は、興津12頁の「*」に書いてあるように、その法律がいつ制定されたかに大きく影響されると思います。ただ、同じ時期のものでも、明確に書ける場合と、そうでない場合は、あると思います。
定義規定を設けないメリットは、詳しいことを決めずに法律を作れるということだと思います。著作権法35条なども、そうでしたね。詳しいことまで決めようとすると百家争鳴になり紛糾して法律を作ること自体ができなくなる、という場合もあり得ます。
そういうこととは関係なく、法律は簡潔に、というポリシーで、細かいことを書かない、という起草者も、いるかもしれません。興津12頁は、民法についてその傾向があったのではないかと示唆していますね。
判決例の表し方
「最決平成29年1月31日民集71巻1号63頁」
事件番号:「平成28年(許)第45号」
事件符号:「(許)」
事件符号一覧
裁判所サイト>裁判例情報>各判例について
民事保全法?
shiraishi.icon
本件(忘れられる権利)は、民事訴訟法によるもの(通常の訴訟)でなく民事保全法によるものです。「民事訴訟法の判決」と「民事保全法の決定」との違いは、民事訴訟法を学べば出てくると思います。例えば、証明でなく疎明で足りる、など。
裁判の公開の程度も異なります。(下記)
事実については、疎明で足りるのですが、法律判断は民事訴訟法でも民事保全法でも同等の重みである、と考えるのが普通だと思います。
「債権者」「債務者」とは?
shiraishi.icon
これは民事保全法の特殊な用語です。普通の民法の教科書に載っている「債権者」「債務者」のほうを優先して学んでください。
検索結果削除請求のような請求を認めたら、その後、同じような請求が増え、手に負えなくなるのではないでしょうか?でたらめな報道記事について報道機関に請求するのなら、また別かもしれませんが。(shiraishi.icon白石が質問を若干編集)
shiraishi.icon
そのあたりをさらに考えるには、この最高裁決定の後、どのくらい請求があったか、検索事業者ではどのように対応しているか、検索事業者にとって対応は簡単かどうか、によっても異なると思います。もし、簡単だったら、何とも思わないと思いますし、簡単でなければ、お考えと同じような感想を検索事業者も持つことになるでしょう。
なお、私の直観では、検索事業者は、一定範囲では、裁判になる前に、削除に応じているのではないかと推測します。
でたらめな記事については、名誉毀損などの観点から損害賠償請求訴訟がよく起きていますね。そのこともあわせて、さらに考えてみてください。
興津先生の資料の14ページで「刑法については罪刑法定主義による限界もあり、日常用語との対応もなお意味を持つ」とあるのですが、どのような意味でしょうか。
shiraishi.icon
これは、刑法では、罪刑法定主義に代表されるように、強い権力に限定をかけなければならないという根本原理があるので、刑法のほうが民法より、許される解釈の幅が狭い、という意味だと思います。言い換えれば、民法などでは国語的意味から離れた解釈も許されるかもしれないが・・・、という趣旨だと思います。
本件(おから)は、争っても負けるのが確実だったのではないでしょうか。なぜ最高裁まで行ったのでしょうか。
shiraishi.icon
もっともな質問ですが、これは、社会にはいろいろな人がいる、ということです。一般論ですが、弁護士が無理ですよと言っても、本人が最後まで争いたい、と強く依頼することもあります。逆に、弁護士のほうが、勝ち目があるし判例にもなるから、と言って、上訴を勧めることもあり得ないとは言えないと思います。事件ごとに、そういう、人間臭い事情があります。これから1件1件、具体的に学んでいくなかで、そういう事情が垣間見えたり、関係の人の話から推測できる場合があると思います。そういうことの積み重ねで、慣れていってください。
なぜ条文を見るのか、というと、条文に「正統性」があるからだ、ということでしたが、「正統性」とは、民主主義的手続がとられている、手続的に正しい、という意味でしょうか。
shiraishi.icon
「正統性」:おっしゃるとおりですが、
ここでは、国会が定めたものだから、というのが最もストレートな言い方ですね。
もちろん、絶対王政なら、王様が権限を与えた者の意見かどうか、ですね。
「正当性」:それとは別に、良いかどうか、の「良い」です。
正統性はあるが、良くない、ということは、あり得る、ということです。
人によって、「良い」かどうかの結論は異なると思います。
忘れられる権利の最高裁決定のせいで、本件の抗告人が有名になり、ますます忘れてもらえなくなる、ということは、考えなくてよいのでしょうか。
shiraishi.icon
もっともなご指摘ですが、だから、民集で、抗告人は「X」と書かれているのですね。もっと調べても、抗告人の氏名はわからないと思います。民事保全法の手続は、民事訴訟法の訴訟手続と異なり、公開していません(公開の法廷で行わず、事件記録の閲覧についても訴訟より公開度が低い・・民事訴訟法91条と民事保全法5条を比較してみてください)。もちろん、絶対わからないとは言えず、そのへんは、本人も了解して、弁護士と相談した上で、裁判に臨むか否かを決めていると思います。